エアコンの汚れで咳が止まらない

2025年05月01日 15:10

私たちが日常的に使用するエアコンは、快適な室内環境を保つ上で欠かせない存在です。しかし、適切に清掃されていないエアコン内部は、健康被害の要因となる可能性があることが近年の研究により指摘されています。特に、「咳が続く」「喉がイガイガする」「呼吸が苦しい」といった呼吸器系の不調は、エアコン内部の汚れや微生物汚染と関連している場合が少なくありません。

エアコン内部は、湿度と温度が一定に保たれるため、カビ(真菌)や細菌が繁殖しやすい環境です。特にフィルターや熱交換器(エバポレーター)には、空気中のホコリや皮脂、花粉などが堆積し、これが微生物の栄養源となることが知られています。国立感染症研究所などの報告によると、こうした環境で繁殖した真菌の胞子が空気中に拡散されることで、吸入した人に咳や気道過敏症状を引き起こすことがあるとされています(Miller JD, 1992)。

さらに、2000年代以降の研究では、「Sick Building Syndrome(シックハウス症候群)」の一因として、空調設備のカビ汚染が挙げられています。日本呼吸器学会の報告によれば、室内空気中に浮遊する微細な真菌胞子や微粒子(PM2.5など)が気道に付着することで、慢性的な気道炎症を誘発し、咳や喘息様症状を引き起こすことがあるとされています(Iwata T et al., 2006)。

特に免疫力の低い高齢者や子ども、呼吸器系の持病を持つ人にとっては、エアコン由来の汚染が健康リスクを高める要因となり得ます。アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎を持つ人では、ハウスダストやカビに対して過敏に反応しやすく、わずかな汚染でも咳やくしゃみが止まらなくなることも報告されています。

また、フィルターを通過して室内に拡散される化学物質や微細粒子の存在も見逃せません。ある実験研究では、1年以上清掃されていないエアコンの送風口からは、通常の2〜5倍の細菌数が確認され、それに伴って空気中の微粒子濃度も上昇することが明らかになっています(Sundell J et al., 2011)。

このような背景から、継続的な咳や喉の違和感がある場合、まずは居住環境、特にエアコンの清掃状況を見直すことが推奨されます。見た目には清潔に見えても、内部の熱交換器やドレンパンなどは専門的な洗浄を行わなければ汚れを除去することが困難であり、表面的なフィルター清掃だけでは不十分なことが多いのです。

実際、エアコン内部洗浄後に咳やアレルギー症状が改善されたという症例も複数報告されており、エアコン清掃が室内空気質の改善と健康維持に寄与する可能性が示唆されています。

以上のことから、原因不明の咳が続く場合や、特定の室内に入ったときに症状が強くなる場合には、エアコンの内部汚染を一因として疑うことが重要です。健康のためには、定期的なエアコン清掃と室内換気の徹底が求められます。

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